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Archive for 2009年 9月 23日

ベトナムの障害児教育事情~北部編~

私は主に農村や農業に関わる活動を実施してきましたが、その他にもいろいろなご縁で、他の分野の皆さんとも一緒に仕事をさせて頂いております。たとえば、障害児教育に携わる先生方がいらっしゃいます。これまでに北部のハイフォン市、ハノイ市、中部のダナン市、クアンナム省、南部のホーチミン市、アンザン省の障害児教育の関係者や施設を訪問しました。 

今回、久しぶりにハイフォン市とホーチミン市の先生方と学校を訪ねて来ました。毎回、訪問するたびに変化があり、とても驚くのですが、今回も先生方のたゆまぬ努力と改革を目指した実行力を感じた訪問となりました。

まず、ハイフォン市の盲学校です。校長先生のチュエンさんから課題などについて話を聞きました。先生方やご両親が苦労なさっているのは卒業後の子どもたちの自立の方法です。マッサージや按摩などの技術を習い、生計を立てている卒業生もいますが、全ての卒業生がそういう職業に就けるわけではありません。中には農村に戻っていく子もいるため、農作業を覚えることも大事であると話していらっしゃいました。先生方やマッサージだけではなく、職業の幅を広げていこうとしています。

この盲学校はハイフォン市教育養成局の管轄下にあり、先生方の給与や光熱費などはハイフォン市から出ています。しかし、職業訓練のための研修実施費用や教材の購入費はほとんど予算がなく、先生方はお金のかからない手作りの研修を行っています。先月、チュエンさんや他の先生方の努力により、ベトナム企業の支援を受けて立派な「職業訓練センター」が建設されました。前回、訪問した時にはなかった建物です。チュエンさんをはじめ、他の先生方もこの建物を活用し、様々な職業訓練を行っていきたいと話していました。

 

チュエンさんと職業訓練センター

チュエンさんと職業訓練センター

次にハイフォン市の聾唖学校です。校長先生のタインさんと元校長のダットさんと話をしました。現状では、視覚障害を持つ子ども達より、聴覚障害を持つ子どもの方が職業の選択の幅が大きいそうですが、まだ全ての卒業生が就職できる状態ではないそうです。聴覚に障害を持つ子ども達は軽度の場合、訓練することで聴力が改善します。しかし、そのために補聴器が必要となります。

真ん中がタイン先生

真ん中がタイン先生

以前と違ってベトナム国内でも補聴器を購入できるようになり、1つ2万円から6-7万円のものまであるそうです。ベトナムの普通の家庭でも2万円というのは大きな金額です。補聴器は各家庭で用意することとなっているため、貧困世帯では購入できないそうです。また、2-3年利用すると新しいものに交換しなければなりません。そうした経済的な負担から、補聴器を持てない学生がたくさんいるそうです。学校が補聴器を購入して子ども達に携帯させたいのですが、そうした資金がないのが現状です。盲学校と同じく、予算が限られているのです。

学校ごとに職業訓練を実施する場合、予算や職種が限られてしまうことから、盲学校と聾唖学校の先生方や退職された先生方が中心となって、ハイフォン市に「障害を持つ人のための職業訓練センター」を設立するという構想があります。障害児教育に携わっている先生方や卒業生、民間の方が講師となり様々な職業訓練を実施し、予算は父母会からの寄付や企業からの支援、ハイフォン市行政の支援などを充てるというものです。就職先の紹介をしていくことも考えています。

日本でも障害を持つ人々の就職事情が厳しいことを考えると、ベトナムの場合も茨の道であります。しかし、真剣に障害を持つ子ども達の将来を考えている先生方やご両親が存在し、また、そうした人々を応援しようとするベトナム企業も存在します。小さい和ですが、こうした和を少しずつ広げていけるよう、私も微力ながら手伝っていきたいと思います。