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Archive for 2009年 9月 9日

これからの外国企業の動向と国際協力(2)

「ベトナムの農村で農家の生活改善のための支援を行っている」とお話すると「これから産業が発達し、農村から都市への人口流出が生じると思われるが、その辺りの見通しはどうですか?」という質問を頂きます。私の考えでは、ベトナムでは少なくとも10-20年くらい先まで、日本が経験してきたような農村から都市への大規模な人口流出は起こらないと考えています。理由は簡単で、都市やその周辺に農村の人口を吸収できるだけの産業が育っていないからです。

現在、工業製品などの生産を行っているのは主に日本企業など外資で、昨年のように不況が襲ったり、生産コストが上昇すれば他の拠点に移る可能性があります。つまり、ベトナムの人々が産業を興し、発展させているとはいえないのです。また、残念ながら、ベトナムには産業が育つ条件も十分に整っていないと言わざるを得ません。例えば、日本にはモノづくりを支える基盤、つまり、規格通りに寸分違わないネジなどの部品を何万個も生産できる能力を持つ中小企業が存在していますが、ベトナムではそうした基盤があまり育っていないと言えます。人材も育てないといけない訳ですから、相当な時間が必要となるでしょう。

また、ベトナム政府はIT産業の発展を推進していますが、こういう職種は少なくとも専門学校卒か大卒の人でないと就職の機会を得られないと思います。農村でIT関係の教育を受けられる人は限られており、多くの若者に雇用の機会が提供されるとは思えません。こうした理由から、急速に、しかも大量に農村から都市への人口流出が生じるとは考えにくいのです。

以上のように状況を想定していくと、やはり多くの人口を抱える農村への支援が大切であると思うのです。私が農村に関わる理由は、私達の食と地域の環境を支えている農家の皆さんの暮らしが、少しでも改善されたり安定できたらいいな、と考えているからです。どの地域にも都会に憧れる若者はいるでしょう。そういう人々は遅かれ早かれ、都市に出ていくと思います。一方で、農村が好きだから残りたい、或いは残らざるを得ない人も存在します。そういう人々が家族や友人と楽しく暮らしていけるように、生活の基盤作りに協力したいと思うのです。

これからは、外資に頼るだけではなく、もっと地域経済を活性化させて雇用を生み出していくことも必要です。地域づくりに関しては、すでに日本を含め他国でも様々な取り組みが行われ、成功している地域もそうでない地域もあります。そういう事例をベトナムの人々に紹介しながら、一緒に地域の力をつけていくための方法を模索していきたいと思います。