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ハイブリッド種のメリットは少ない
こんな調査報告がハノイ農業大学から発表されました。
Economic impact of hybrid rice in Vietnam an initial assessment
http://www.cares.org.vn/webplus/viewer.build.asp?pgid=3&ncid=55&aid=186
ベトナム北部・紅河デルタの米どころ、旧ハタイ省(今はハノイ市となりました)とナムディン省で2007年に100世帯の農家を対象にハイブリッド種の稲の経済的なインパクトを調査したそうです。その結果、ハイブリッド種だと収量が2.1%しか増加しないこと、一方、化学肥料の使用量が1haあたり30㎏も増加していること(ハイブリッド種を利用しない時より16-17%増)が明らかになったそうです。
ハイブリッド種は購入しなければならないので、農家の経済的負担がかかります。その上、化学肥料の量が増えると、負担はさらに増えることになります。農家にとってハイブリッド種を用いた際に経済的なメリットがないことが、具体的な数字で示されていました。
さらに、この報告では、政策にも疑問を投げかけています。ベトナム政府はハイブリッド種の開発や遺伝子組み換え技術の振興に多額の予算を割いていますが、ハイブリッド種に関しては80%が中国から輸入されているのが現状です。つまり、ハイブリッド種の研究・開発に多額の予算を割いているにも関わらず、ちっとも良い結果が得られていないことを指摘しているのです。
農業農村開発省をはじめ、各省の農業局のスタッフも「ハイブリッド種を使うと稲の収量が上がり、貧困削減につながる」と考えている人が多いです。しかし、この調査報告のように、世帯レベルでのインパクトを具体的に示すことで「ハイブリッド種=高収量=良いもの」という認識が再考される「きっかけ」となります。
改めて、研究者の皆さんの役割が重要であること、「印象」や「思い込み」ではなく事実、実態に基づいて議論していくことの大切さを感じました。農家の皆さんの経験を科学によって裏付けていく。ハノイ農業大学の先生方とも意見交換を始めています。これから、真剣に、研究者の皆さんとの連携に取り組んでいきます。
Posted: 2009年 9月 1日 カテゴリ: 未分類.
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