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ベトナムの障害児教育事情~南部編②~

さて、今日はホーチミン市8区にある希望8学校(聾唖の子ども達が通う公立学校)をご紹介します。校長先生のニー先生とは3年ほど前からのお付き合いになります。久しぶりに訪問し、最近の学校の様子などを伺いました。 

学校前で ニー先生

学校前で ニー先生

この学校は1989年に創立され、ホーチミン市8区の教育養成室の管轄の下で管理・運営されている公立学校です。8区は経済的にゆとりのない世帯が多く、障害を持つ子ども達のご両親もバイク・タクシーや日雇い労働によって生計を立てている方が多いです。1989年以前は8区に障害を持つ子ども達が学ぶ学校が設置されておらず、子ども達は自宅で過ごしていました。ご家族の負担も大きく、また、近所の皆さんの理解を得ることが大変難しい状況でした。こうした状況から、障害を持つ子ども達が社会に少しでも早く出て自立した生活が営めるよう、希望8学校が創設されました。

現在は9ヶ月から15歳までの43名の子ども達が希望8学校で学び、24名の子ども達が公立の小中学校で普通学級で教育を受けています。希望8学校では0歳から3歳児までの子ども達とご両親を対象に、障害の度合いに合わせた教育プログラムを実施しています。これは障害を持つ子ども達が早めに学校に通い聴力を回復させ、普通学校で学んだり、社会生活により適用できるようにするためです。また、3歳から15歳までの子ども達は幼稚園と小学校のカリキュラムにそって学んでいます。一方、軽度の子ども達は普通学級で学びながら希望8学校で補習を受けています。その他、年に数回、遠足などにも出かけ、社会勉強の場を設けています。絵画コンクールやスポーツ大会にも積極的に参加し、これまでに数々の賞を頂いているそうです。

授業中の子どもたち

授業中の子どもたち

学校の図書室

学校の図書室

気になるのは卒業生の「その後」ですが、視力障害を持つ子ども達と比べて、就職できる子ども達が多いようです。例えば、製靴会社や繊維業会で働いたり、民芸品の製作、画家やドラマのメイクアップを担当している卒業生もいるそうです。また、結婚し、家庭を築いている卒業生もたくさんいます。素晴らしいのは、卒業生の会が毎月、開かれていて、仕事の悩みや社会生活における問題などをお互いに相談していることです。

学校を訪問した時、子ども達は素晴らしい笑顔で迎えてくれ、目を見てきちんと挨拶をしてくれました。ニー先生は語ります。

「1990年代は大変でした。私は以前、幼稚園の教員をしていましたが、この学校が設立された時、副校長に任命されました。障害を持つ子ども達の教育には携わったことがなかったので、手探りで始めていくしかありませんでした。当時は自宅にこもっていた子ども達が多く、自信がない状態で通学していました。学校に来ても笑顔が少なく、健常者の人と関わることを恐れていました。私達、教員は積極的に子ども達と外出し、健常者の人との関わりを増やしていきました。少しずつ子ども達が心を開き、一生懸命学ぶようになりました。近所の皆さんも最初はあまり子ども達に声をかけてくれませんでしたが、子ども達がしゃべる努力を見せたり、笑顔を見せるようになり、声をかけてくれるようになりました。今は子ども達が自信を持って、楽しく学んでいます。」

学校が抱える課題はたくさんありますが、ニー先生を初め、先生方が一丸となって、できることから積極的に取り組み、改善をしてきました。そのことを子ども達やご両親、地域の人々が理解し、一緒に学校を創ってきたのだと思いました。現場の力、地域の力、個々人の力、それらが合わさって、今の希望8学校があるのだと思います。

農業・農村や障害児教育は分野が違いますが、問題を解決するための重要な要素はどの分野にも共通するのではないか、と思いました。ニー先生たちに学んだことを農業・農村にも活かしていきたいと思います。農村の子ども達との交流なんてのもいいですね。