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在来種の復元事業がスタートしました!
トヨタ財団から助成を頂くことが決定した在来種の復元事業がいよいよスタートしました!11月5日にタンラック郡人民委員会でキックオフ会合を開催しました。タンラック郡内24の村と町のリーダーと農業普及員、そしてタンラック郡農業関係者、タンラック郡テレビ局など合わせて49名が参加しました。

開会の挨拶を行うフンさん
開会式の後、伊能より事業の説明をさせて頂きました。続いて、タンラック郡植物防疫所のフンさんから在来種の復元の意義について発表がありました。そして、すでに在来種の復元に取り組んでいるタインホイ村のトゥアンさんとティンさんが経験を話してくれました。
質疑応答では、事業の対象村であるナムソン村やフークオン村のリーダーの他、フォンフー村、フーヴィン村、トゥアンロ村、ローソン村、マンドゥック村、クイッチエン村、クイホウ村のリーダーと農業普及員の皆さんから様々な意見が出されました。

意見を述べるトゥアンロ村のスイェンさん
とても印象的だったことは、私が想像していた以上に、参加していた皆さんの在来種の復元への関心が高いということでした。「うちの村でも研修をして欲しい」という要望が6~7村から出されました。というのも、ここ数年、天候不順や病害虫に見舞われ、その被害は在来種よりも改良種の方がひどかったからなのです。特に今年はウンカやいもち病が発生し、中国産の改良種などが軒並み被害を受け、多くの村で不作に陥りました。
ローソン村のリーダー、ルオムさんの意見です。
「2009年は不作の年でした。だから、このワークショップで解決策を見つけたいと思って参加しました。『種の革命』はあまり成功していないと思います。今、たくさんの新しい種類の稲があります。しかし、一部の村では土壌の改良ができないために、そうした新しい種を使っても成果がでません。ですから、在来種を使っています。そして、在来種の価値を見直しています。農業室の皆さんに言いたいことは、今度の冬春作はどうなるのか?ということです。もしタンラック郡として在来種を奨励する、という方針が出されたら、どんな影響があるでしょう。これまでに多くの村人は在来種は『遅れた』ものだから改良種を用いるよう指導されてきました。今、また在来種に戻ろうとした場合、村人の多くはそんな『遅れた』ものを使うことで本当に効果があるのか、と思います。でも、これまで新しい改良種を用いるごとに私達は様々な困難に見舞われました。今日は他の皆さんからもこの問題について、意見を聞きたいです。」
各村からも意見が出された後、タンラック郡農業室長のフンさんは次のようにまとめました。
「在来種の良い点は自分で種を採れること、病害虫の被害が少ない、気候に適している、といえると思います。しかし、ルオムさんの意見にあったように、在来種は本当に効果があるのかというと、今のままでは難しいと言わなければなりません。それは、年を追うごとに種が劣化しているためです。良い効果を期待するなら、在来種の良い点を残していくための工夫をする必要があります。・・・在来種に戻るか?改良種に戻るか?という二者択一ではないと思います。時間をかけて種の質が安定してきたら、少しずつ面積を増やしていけば良いのです。ここで各村にお願いしたい。この問題に関心がある人を探して欲しい。そして実践してください。タンラック郡としても予算をつけて研修を実施していきたいと思います。村ごとに計画を立てて実施していけたら良いと思います。」
タンラック郡でのキックオフ会合について、全てをご紹介しませんでしたが、各村の代表が発表した意見は、参加者が種の問題について考えるための様々な視点を提供してくれました。素晴らしいと思ったことは、誰も「●●が一番良い」と断言しないことでした。農業において、一つの農法、一種類の農薬、一種類の種が全ての問題を解決してくれる訳ではありません。大事なことは、それぞれの状況に合わせて違うものを組み合わせたり、やり方を変えたりすることだと思います。
そして、農家の皆さんの最大の目的は、リスクを最小限にすることです。ですから、観察を怠らず、冷静な判断力を磨き、日々、創意工夫や取捨選択をしていらっしゃるのです。そうした、素晴らしい現実的なバランス感覚が皆さんの発表の中に表れていたと思います。これから3つの村で実践しますが、収穫後にはきちんと評価会合を実施し、他の村の人々にも結果を共有していきたいと思います。
次回はナムソン村でのキックオフ会合と研修の様子についてご紹介します。
Posted: 2009年 11月 10日 カテゴリ: 未分類.
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