Terra Madre Japan 2009 その壱
怒涛の一週間を振り返り、参加させて頂いたイベントなどについて報告していきたいと思います。
まず、10月23日から始まったスローフードジャパン主催のテッラマードレ・ジャパン2009。私は23日のテーマ別セミナーで「お米」というお題目で話をさせて頂きました。日本生産者会議なので、日本の食と農をめぐる状況や各地域での取り組みなどが中心に紹介されていたのですが、私の場合、日本で体系化された合鴨農法をベトナムの皆さんに紹介してきたという繋がりで、お話をさせて頂く機会を与えて頂きました。私の出番は午後でしたが、午前中にも興味深いテーマがたくさんありましたので、ご紹介します。
まず、山本謙治さん(通称やまけんさん)の「食生活と食品の流通」。日本の食は安すぎるのはなぜか。食品の値段を決めているのは誰か?ということで、強大な交渉力を持つスーパーと卸売り、食品メーカー、生産者の関係などについて、実態を話してくださいました。

やまけんさん
また、倫理(ethic)がなくなってきていること、つまり、価格だけが先行し、作っている人の暮らしに目が向かなくなっていることも問題である、ということ。ある生産者が「これからは取引ではなく、取組へ」とおっしゃっていたそうです。これは、生産者と歩みを共にできる、苦労を分かちあえる流通業者、消費者と関係を保っていきたい、ということです。
逆に、それができない人には農作物を売らない、ということです。本来、食べ物を作っている人は強い立場のはずです。その価値を評価しない人には売らなくても、暮らしが成り立つのが、本来の農家の姿なのではないでしょうか。ヴァンダナ・シヴァさんが言ってるような、「価格ばかりを話して、価値については誰も話さなくなってしまった」ということにも通じていると思いました。
そして、とても共感を覚えたのは、日本人の多くはお金がないから安い食材を購入しているのではなく、食費にお金をかけていない、という指摘です。総務省のデータでは、過去10年の間に家計に占める食費の割合、つまり、エンゲル係数はほぼ横ばいで、通信費やレジャー費が増加しているのです。収入は同じか減っている方が多いと思いますが、その中で、どれくらい食費に割くのかは個々人の価値観、考え方に拠るということです。
最後にやまけんさんは参加者にこう呼びかけていました。「皆さんが明日からでもすぐにできること。それはスーパーで●●という食品はないか、と問い合わせてください。例えば、有機野菜はないか、とか、放牧された牛の牛乳はないか、など。それがスーパーを変え、流通を変えていくことに繋がります。」
食品の流通のプロであるやまけんさんのお話を伺っていて、都会で食べている人のちょっとした心がけで、生産者の暮らしを守り、食品の安全を守っていくことができるのだと思いました。安全でない食品を生産し、販売していたメーカーなどを批判するだけではなく、なぜ、そういうことをしたのか、どんな事情があったのか、を問うことも必要です。そして、何よりも作っている人々の暮らしを思う、思いやりが必要なのだと思いました。
Posted: 2009年 10月 27日 カテゴリ: 未分類.


