Seed to Table~ひと・しぜん・くらしつながる~

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種の履歴書

久しぶりの活動報告になりました。ベトナム北部の山岳地域にあるホアビン省タンラック郡内3村で実施している在来の稲の復元・記録事業ですが、残念ながら3つの村のうち、1つの村では雨不足で田植えができず、今季の収穫は諦めざるをえない状況になりました。残りの2つの村では順調に稲が育っていましたが、タンラック郡農業室のケムさんが知らせてくださったウンカの被害がどこまで及んでいるのか、心配です。

暖かな4月のある日、田んぼで交流会を開催しました。多くの村人が参加し、在来の稲の復元への関心が高まっていることがわかりました。パイオニアの農家の皆さんの努力が実りつつあります。

こうした活動と平行して稲のエキスパートである、お母さん達に集まって頂き、各集落で植えている、或いは植えていた稲について調べ、「稲の履歴書」を作成しています。うるち種ともち種を併せて、各集落で15~20種類が挙げられました。

なんて名前だったっけ?

なんて名前だったっけ?

「ずいぶん前に植えなくなってしまったから、もう名前も忘れちゃったわ。でも、間違えなく、昔は今よりもっとたくさんの種類の稲を植えていたのよ」とディックザオ村のお母さん達は教えてくれました。

お母さん達の話を聞きながら、あまり離れていない集落の間でも異なる種類の稲が植えられていたことに、とても驚きました。でも、考えてみると、集落ごとに異なる種類の稲が植えられていたのは当然のことかも知れません。タンラック郡は山がちなところで、昔から小さな盆地ごとに集落が築かれていたのですから、微妙な地形の違いから温度差や日照時間、水量などの違いが生まれ、その違いに適用するように、多種多様な在来の稲が生まれたのでしょう。

日本も含めて、世界各国で動植物や微生物などの遺伝資源を保存していくためのジーン・バンクやシード・バンクが設置され、何十万という種が収集・保存されています。でも、きっと世界中には、こうした施設に報告されていない種がたくさんあるのではないかと思います。

タンラック郡での取り組みは世帯・集落レベルの小さな規模ですが、この活動で見えてきたものは、ゆったりとした時の流れの中で、生物達が生き延びるために環境に適した特徴を持つように変化し、それを人間が活用しながら暮らしてきた、人と生き物の共存の姿でした。

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