ちょっと遅れて・・・Terra Madre Japan 2009 その弐
イベント報告第二弾は、スローフードの創始者、カルロ・ペトリーニ氏のスピーチと岩崎政利氏の「種の多様性について」という講演についてご紹介します。
まず、カルロ・ペトリーニ氏のスピーチは相変わらずエネルギッシュで、心に響きまくる内容でした。中でも力説されていたのは、スローフードはエリートの運動ではないこと、そして、大事なのは「愛情」と「楽しむこと」である、ということ。

スピーチ中のカルロ・ペトリーニ氏
多くの国でスローフード運動が広がっていますが、生産が直接関わらず、都市に住む一部の方が中心となって活動が企画・実施されたり、スローフード=高級グルメと認識されている傾向は否定できないと思います。FAOのある国の代表とお話した際に、ベトナムの農家と一緒にスローフードの会議に出席してます、と話したところ、「ふうん」というちょっと皮肉めいた反応が返ってきたことがあります。それはきっと、既述したような状況が見られるからでしょう。
農民運動のみならず、様々な運動において、当事者であるはずの人が運動の中心になっていないことがあります。外部の方が当事者の皆さんと話し合いながら、外部の視点を活かして当事者が中心となった運動できれば良いのですが、現実はそううまく行かないようです。
一番大事な情報や事実は、やはり現場にあると思います。そこで生じていること、住んでいる人が思っていること、やっていること、希望していることをきちんと理解することから全てが始まります。それなくして、実り多い事業、運動は成し遂げられないでしょう。私もカルロ氏のスピーチを肝に銘じ、気持ちを新たにしました。
次は岩崎政利氏の講演についてです。岩崎さんの種、野菜、自然についての深い愛情が感じられる素晴らしい講演でした。岩崎さんがずっと大事に種を守り、育てていること、そして、種を守ってきた人への深い尊敬の念も感じられました。

岩崎氏
ある時、私もお世話になっている京都の農家、長澤さんとお会いした際に、長澤家では京野菜の種をずっと守り伝えてきたことを知ったそうです。岩崎さんは様々な種の魅力-例えば、ある土地で初めて播種した場合、発芽してみないとどんな色・形になるのかわからない、など-を知っていらっしゃるだけに、種を欲しいと思ったそうですが、「何代にもわたり、ご先祖が守ってきた種をおいそれと下さい、とはとても言えませんでした」・・・この言葉は、岩崎さんの慎ましい人柄が表れているだけではなく、種を守り伝えてきた長澤さんを同じ農家として深く尊敬し、また、京都の歴史や文化にも敬意を払っていらっしゃる言葉だと思いました。
しかし、長澤さんはご先祖が守り伝えてきた種の一部を岩崎さんにプレゼントされたそうです。岩崎さんはそれらの種を今でも大事にしていることはいうまでもありません。恥ずかしいことですが、幸運にも長澤さんの畑を訪問させて頂いたにも関わらず、種のことを伺っていませんでした。今回の岩崎さんのお話を伺い、京野菜を守り伝えてきた長澤家の知恵と技術の奥深さと歴史の重みを感じました・・・。
今回、日本の農家の皆さんが淡々とスゴイこと、素晴らしいことをされていることを改めて認識しました。ベトナムの農家の皆さんにも素晴らしい方がたくさんいらっしゃいます。淡々と、黙々と農業をしていらっしゃる皆さんに、これからも様々なことを学ばせて頂くことでしょう。私もちゃんと恩返しできるよう、成長しなければ!
Posted: 2009年 11月 8日 カテゴリ: 未分類.


