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メコンデルタ・ベンチェ省での調査でわかったこと

先日、メコンデルタに位置するベンチェ省で活動を共に実施する予定の農業普及センターのスタッフと共に村人の現状と過去10年間の暮らしの変化を把握するための調査を行いました。 

ベンチェ省はサイゴンより80kmほどのところに位置していますが、数年前まではフェリーに乗らなければならず、交通のアクセスがあまり良くありませんでした。しかし、メコンデルタの玄関口、ミトーからベンチェ省に続く橋が完成し、交通の便は飛躍的に改善されました。ベンチェ省の省都ベンチェからさらに海沿いに50kmほど走ると、ビンダイ郡があります。今回はこのビンダイ郡内3村で調査を行いました。

調査を行った3つの村は、地理的条件、歴史、人々の生業や暮らしも少しづつ異なっています。1つの村は海沿いに位置し、漁師さんと果樹栽培や稲作、エビ養殖の農家が混在しています。もう1つの村は稲作とエビ養殖が行われていますが、ベトナム戦争時に枯葉剤を大量に撒かれ、その影響を受けた家族が多く住んでいます。最後の村は稲作が主で、数年前から稲作とエビ養殖を交互に水田で実施しています。この村も枯葉剤を大量に撒かれました。

エビ養殖が行われている池。元は果樹園でした。

世帯へのインタビューやグループ・ディスカッションを通じて、3村に共通している課題が乾季の真水不足だとわかりました。3村では今でも雨水を飲料用として利用しています。以前は乾季でも川や井戸からも真水を得ていました。ところが、この10年の間に、乾季になると井戸や川の水は塩水になってしまい、利用できなくなりました。そのことから、乾季に野菜作りや家畜を飼うことが難しくなった上、飲み水を買わなければならなくなりました。

また、一攫千金を夢見てエビ養殖を試した農家の多くが失敗して多額の借金を抱えたり、中には自殺する人まで出ていました。インドでは毎日、たくさんの農家が借金を苦に農薬を飲んで自殺していると聞きますが、ベンチェ省でもそうした事態が起こっていたことを知り、とてもショックを受けました。

この他、枯葉剤の影響を受けたとされる家族の暮らしも経済的に大変な状況にありました。中には70歳以上になった母親が障害を持った夫や子供たちを養うために、1人で日雇い労働に出かけて現金を得ている例もありました。

さらに、2006年にこの3村を大型台風が直撃し、村人の多くは家屋が破損したり、家財道具を失ってしまいました。この地域は台風に襲われたことはなく、村人にとって初めての経験だったのです。ベトナム政府から家屋の建築費用が支給されたものの、台風による経済的損失を取り戻せずに今も苦しい状態に置かれている家族がたくさんいました。

グループ・デイスカッションでは、何を買って、何を売っているのかを村人が分析しました。農家の多くが、牛の糞を非常に安い値段で売り、その何十倍もする化成肥料を購入していることや水路や田んぼで捕まえたカニや魚が重要な現金収入源となっていることもわかりました。さらに、女性達が作ってくれた農業カレンダーでは、雨季に家庭菜園で様々な種類の野菜が植えられていることや、水路や田んぼで魚やカニなどを採り、家族の食生活を支えていることがわかりました。

お母さん達の野菜談義が熱い!

今回の調査で、稲作にかかる課題だけではなく、村人の暮らしの全体像を描くことができるようになりました。3つの村とも、非常に困難な課題を抱えていますが、一方で、創意工夫あふれる農業経営をされている農家の皆さんにもお会いすることができ、嬉しかったと同時に彼らの現実的で合理的な考え方にとても刺激を受けました。台風で家財道具を失った後、夫婦二人三脚で畜産と果樹栽培に励み、家計を立て直し、子育てをしている若いご夫婦にも会うことができました。そして、どの村も女性達がとっても元気でした!

これから、ビンダイ郡の皆さんと活動を一緒に創っていくことが、とても楽しみです。乞うご期待!