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在来の稲の復元・記録事業 評価会合を開催しました。
2009年11月にスタートしました在来の稲の復元・記録事業ですが、ようやく1年を迎えることができました。2009年末から2010年にかけて旱魃があり、今年の夏も雨季に入るのが遅かったため、田植えのスケジュールがすっかり狂ってしまいました。狂っただけなら農家の皆さんの蓄積された知恵と経験で何とかしのげるものの、全く田植えができない集落もあり、コメの自給が確保できず、多くの若者がハノイや他の省へ出稼ぎに出ました。
そんな中、ホアビン省タンラック郡内の3つの村で果敢にも在来種の復元に取り組んだ村人が存在しました。そして、取り組んだ村人の多くは、他の村人が学べるような経験を積み、次季への種籾を得ることができました。各村で評価会合を開催し、実践した村人と在来種を植えたいと考えている村人が集まりました。
取り組んだ村人の一人、フーヴィン村のウオンさんはウンカなどの被害に遭い、例年の2割程度しか収穫できませんでした。ウオンさんは「復元の技術そのものは難しくない。祖父母の頃から伝えられてきたように、良い籾を選んで次季に使う方法だから。でも、在来種を一本で植えて、良い穂を選ぶという方法は試したことはなかった。ウンカなどの被害に遭わなかったら、立派な稲穂になっていただろう。分けつもたくさんしていたし、増収も見込めたと思う」と話してくれました。
在来種やハイブリッド種を用いるかどうかは、農家の選択であり、私達が「このたねが良い」と勧めることはありません。しかし、この事業の一つの目的は「ハイブリッド種=収量が増える良いたね、在来種=収量も悪く、時代遅れのもの」と、農政に携わる職員や村人の多くが何の疑いもなく信じていることに「本当にそうかな?」と疑問を提示することでした。そして、ベトナムの農家が一番、気にしている収量についても、良い品質の種籾を使い、植え方を工夫すれば在来種でも増収が見込めることを示すことです。まだ最終評価をするには時期尚早ですが、在来種を植えたいと考える村人が増えており、少しずつ、関心が高まり、広まっているといえそうです。
驚いたのは、タンラック郡の農業関係者や他村のリーダー達が在来種を再評価し、推進していこうと意欲を見せるようになったことです。長年、活動を一緒に実施してきたタンラック郡農業室のケムさんは、これまで在来種の良さを認めつつも、やはり農業室としてはハイブリッド種を推進する、と断言していましたが、今回の評価会合では次のように意見を述べていました。
「私達が利用しているハイブリッド種は中国から輸入していますが、今年は中国でも種籾が収穫できず、多くの村で種籾を購入できない事態が起きました。私達がきちんと食料を得ていくためには、たねを確保していく必要があります。在来種は収量はハイブリッド種より低くなりますが、自分でたねを確保できます。各世帯では、ハイブリッド種だけではなく、田んぼの状況を考えて、在来種も使って欲しいと思います。」
今度の冬春作には、2つの村で合計82世帯が取り組む予定です。1世帯は集落会議で話し合いをしている最中です。残り1年、できる限り、多くの異なる立場の人たちとの対話の場を設けていきたいと思います。
Posted: 2010年 12月 23日 カテゴリ: 未分類.
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