Seed to Table~ひと・しぜん・くらしつながる~

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田植えが遅れています。そして、青年達は出稼ぎへ。

先週末にかけてホアビン省に出張しました。標高900メートル以上あるナムソン村では、この時期、霧が深く立ち込め、寒い上にしとしとしています。しかし、村人にとっては植え付けの季節。寒いから外に出たくないなどと言っている暇もなく、夏の収穫を楽しみにトウモロコシや野菜の播種に精を出します。今年は寒さが長引いており、例年よりもかなり遅く田植えが終わりました。

フーヴィン村やディックザオ村では3月上旬になっても田植えができないという異常な事態が続いています。これも低温のせいです。しかし、ディックザオ村では、在来の稲が順調に育っていました。在来の稲はもともと寒さに強いため、何とか持ち堪えているようです。一方、フーヴィン村では田植えの時期がディックザオ村よりも遅かったため、ちょうど寒波と重なり、播種できない状態になっていました。昨年の旱魃のダメージが大きかったため、今年はしっかりと収穫を得たいと村人は願っています。

環境教育の活動について各村の青年団の団長さんと話をしたのですが、3村とも共通して、かなりの若者がハノイなどに出稼ぎに出ていました。出稼ぎに出ているのは主に男性で、建設現場や工場での仕事です。

これは何を意味するかというと、これまでの天候不順などによるコメやトウモロコシの不作の影響がじわじわと各世帯に浸透してきており、家畜を売ったりするだけでは凌げなくなってきているということです。一方、携帯電話の普及や、電気・バイクの利用による支出の増加も挙げられます。さらに、ここ数ヶ月の急激な物価上昇、追い討ちをかけるように3月に実施された電気料金やガソリン代の相次ぐ大幅値上げなどの影響もあるでしょう。

このように、多くの若者が現金収入を求めて、短期であれ長期であれ、村を出ていくことが常態化するようになってきています。青年団と共に実施している環境教育でも、様々な活動を実施する上で「人が足りない」とぼやく集落が出てきました。 ある村人はこう話してくれました。

「うちの息子が高校に行かないと決めた時、親としては残念だった。でも、正直、経済的には大変だし、高校を出たところで就職口などないからね。読み書き・算盤ができれば十分だと思うことにした。」

今でも各村で多くの親御さんは、将来のためを思えば子どもに教育を受けさせなければならない、と考えています。そして、かなり無理をして町の高校へ通わせたり、ごくわずかですが、大学へ行かせている家もあります。

しかし、大都市のハノイでさえ、大学を卒業した若者がコネがないなど様々な理由で就職できずにいることを思えば、大学を出た=就職できる、と楽観視できないのが現状です。前述した村人の「読み書き・算盤ができれば」という判断もある意味、現実的なのだと思います。

私自身、若者が村に住むか否かは個々人の選択であると考えています。こういうことを言うと「意外ですね。農村に若者が残って欲しいから、こういう活動をされているのではないですか?」と聞かれることもあります。でも、仮に私のように、よそから来た人が村の若者たちに「村に残りましょう」と言ったとしたら、村の若者はどう思うでしょうか。私が村の若者だったら、何も知らないくせに、余計なお節介だ!と思います。

要点は、本当は都会に憧れていて、村に住むことが必ずしも本意ではないけど、家族もあるし、長男だし、残らなければならないと考えている人や村が好きで家族の近くで住みたいと考える人、そういう人々が農村で安心して子育てしながら楽しく暮らせるようになる、というのが今、私が村人と一緒に取り組んでいる活動の目標です。いつの時代も、どこの国や地域でも、都会に憧れる人はいるはずで、100%が農村から出たいとか、逆に残りたいと考えているわけではないと思います。社会にはいろんな人がいるわけで・・・。

いずれにしても、たくさんの村に住む人々がよりハッピーになるように、村で現金を得られるような仕事を創っていく必要があると痛感しました。