昨年の3月11日、ハノイの事務所で昼食を取り終えた私は、パソコンに向かってニュースを見ていました。突然、緊急地震速報が入り、東北で大きな地震が起こったことを知り、続いて、東京でも震度5強の地震があったというニュースが流れました。すぐに電話を手に取り、夢中で母に電話をしました。仕事中だった母は、とにかく無事でした。でも、電話の途中で大きな余震があり、電話を切らざるを得ませんでした。それから電話が通じなくなり、何時間かしてようやく繋がった時、他の家族は全員、無事だったと知り、張り詰めていた気持ちが少し緩みました。

しかし、その後、福島原発のニュースが流れ、いても立ってもいられなくなりました。ハノイに住む友人達もご家族の無事を確認した後、ようやく会うことができました。でも、話題は地震と原発のことばかり。情報が限られている中、誰もが現状をもっと知りたくて、焦っていました。一方で、ベトナムの友人達は、すぐに電子メールや電話で家族の安否を気遣ってくれたり、お見舞いの言葉をかけてくれました。不安と焦燥感が入り混じる中、ベトナムの皆さんの気持ちに助けられたことを、今でも思い出します。

あれから一年。ベトナムを含めた海外のメディアでも東北大震災の特集を流しており、テレビに釘付けでした。復興の様子が伝えられる一方、人々の悲しみがまだまだ癒されていないことを感じました。瓦礫は全体の6％しか処理されていない、34万人が避難生活を強いられている、福島原発もまだまだ予断を許さない・・・あまりに地震と津波の爪痕が大きいことを改めて思い知ると同時に、この一年で何が変わり、何が変わっていないのか、もっときちんと知る必要があると思いました。

今の被災地の姿を、日本の姿を、ベトナムの友人達に少しずつ伝えていく。そうすることで、被災地の皆さんを励まし、自分の国の未来づくりに貢献する。私にできることは、そういうことだと思っています。