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マイさん夫妻のいま

2011年12月に終了したベンチェ省・持続的農業の実践による貧困層の生活改善事業の活動のなかに、環境に配慮したアヒル・鶏の肥育方法がありました。約200世帯が研修を受け、アヒル・鶏基金から約1,800円を借りてヒナを購入し、育てています。その中でもダントツで利益をあげていたタインフック村のマイさんご夫妻に、久しぶりにお会いしました。

 

購入した水タンクについて話すマイさん夫妻

昨年5月からアヒル・鶏の肥育に取り組んでいますが、マイさんは何と今年4月までの間に11回もアヒルのヒナを育て、毎回、5,000円以上の純利益をあげています。そして、毎回、肥育する20羽のヒナはほとんど病気にかからず、成長しています。訪問した際にも、購入して2日目というヒナともうすぐ販売するというアヒルの2つのグループがいました。

マイさんご夫婦は、農地を持っていないため、日雇い労働に出て生計を立ててきました。しかし、旦那さんは14年前に身体に障害を持ったため、自宅で家事を担当し、マイさんが家族の暮らしを支えてきました。昨年、私たちの活動を知り、アヒル・鶏の肥育研修に参加し、小規模な資金を借りて、アヒルを飼うことにしました。自宅の周辺を活用した肥育方法ですから、身体が不自由な旦那さんが十分に世話をできると考えたためです。また、借りる資金が小規模であったため、「この金額だったら返せる」と思ったそうです。

実は、お二人とも文字を書いたり読んだりできませんが、数字はわかります。旦那さんが、一生懸命、日々の支出入を記録し、アヒルの餌代がかさむと、野菜を育てたり、お隣からバナナを融通してもらったりして、餌代を軽減する努力をしてきました。そのことが、高い利益を生むことに繋がりました。

昨年12月に開催した評価会合では、参加者の前でご自身の経験について話してもらいました。餌代がかさんで赤字になった世帯は「借りられる金額が小さいからだ」と不満をもらしましたが、マイさんご夫妻は「私たちにとっては、大きな金額だった。これを元に何とか現金を得たいと考え、餌代を抑える工夫をしました。これ以上、大きな金額だったら、借りることに躊躇したでしょう」と話しました。

マイさんご夫妻は自宅で真新しい水タンクや木製のベッドを指して、嬉しそうに「これらは、アヒルを売ったお金で購入したんですよ」と話してくれました。また、マイさんが日雇いに出る日数が減ったそうです。これからの夢は?と聞くと「これからもアヒルを飼いながら、暮らしを良くしていきたい。また資金を借りるチャンスがあったら、次はもう少し大きな金額を借りたいです」と話してくれました。

小さなことを確実に積み上げ、自信をつけながら、次のステップに進んでいく。貧しいから、文字を知らないから、できないわけではない。家族が互いに労わり、助け合いながら暮らしを良くするための努力を重ねてきた、マイさんご夫妻から、私自身、とても大切なことを学ばせてもらいました。